地方政治が中央政府を揺るがす時代があった・・・革新自治体の歴史
7月31日投開票の東京都知事選挙では、無党派層から圧倒的な支持を受けた、小池百合子氏が当選しましたが、かって日本にも地方政治が中央政府を揺るがした時代がありました。それが革新自治体の存在です。この7月に中公新書から、新著「革新自治体・・熱狂と挫折に何を学ぶか」(岡田一郎著作)が発刊されました。内容は、おもに1960年代から1970年代末まで全国に広がった、革新自治体の歴史と実績などに焦点をあてた内容です。私は横浜市緑区(現在は青葉区)で生まれて育ちましたが、この横浜市も飛鳥田一雄市長で名をはせた、代表的な革新自治体の一つでした。著作では飛鳥田市政についても詳しく触れいてます。私が子どものころの思い出として、横浜市が他の自治体と比べ、下水道の整備が大変遅れていたことを、今も鮮明に覚えています。この著作を読むとその原因が指摘されています。「(飛鳥田市長当時)企業が横浜市内に大規模住宅を開発する一方、人口増加にともない必要となる社会資本の建設に企業は非協力的であった」「そのため横浜市は必要な社会資本を(自前で)整備せざえる得ず、その費用が財政を圧迫していた」とあります。これで横浜市の下水道整備が遅れた理由が腑に落ちました。著作のなかではほかに、京都府の蜷川府政、東京の美濃部都政の実績と歴史についても、革新自治体の代表的なものとして取り上げています。著書では最後に「かって飛鳥田や美濃部を熱狂して支持した人々と、青島幸男、横山ノック、石原慎太郎、橋下徹を熱狂的に支持した人々は思想信条こそ大きく異なるが、自分たちで問題を解決しようとする前に、自分たちの要望を聞いてくれる『名君』の出現を期待している点では通底しているように思われる」と結んでいます。今回の都知事選挙もこの流れなのか。評価はともかく、今後、地方政治の民主的変革をどう展望するか、興味ある著作です。